環状線徒歩1周、序盤で体力の限界。
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とりあえず休憩だ。お昼過ぎなので、ご飯にしよう。きっとお腹が減って力が出ないだけだ。道中のお店で好物のうどんを頂く。
運動中の昼食としてふさわしいメニューには見えないが、うどんは神に選ばれし食物なので問題ない。とにかくエネルギーを補給して足を休める。
ポケウォーキングをする時は毎度のことなのだが、最初は楽しいのだ。しかし、疲労を感じてくるにつれて周囲の景色も単調に映り、徐々に惰性で歩くようになる。そうすると楽しさが消えてくる。まぁ、無理して続けることも無いのだが、ここがある意味の踏ん張りどころ、自分との闘いかも知れない。
30分ほど休憩し、再開。
鶴橋駅 13時10分 16771歩 7駅/19駅
JRと近鉄電車・地下鉄が交差する乗降客の多い駅。高架下の商店街はコリアタウンになっていて、漬物を売る店や焼肉店が多く立ち並ぶ。そのため近鉄の駅のホームは焼肉の香りで充満することがある。発車メロディは「ヨーデル食べ放題」。
鶴橋に着いた。独特な雰囲気があってとても良い場所だ。
私は商店街が好きだ。店先に並ぶ商品を見て回るだけでも飽きない。
ご時世もあって鶴橋周辺も人が減っていたが、だいぶ賑やかさが戻ってきた。浪速の商人たちが盛んに客の目を引こうと呼び込みをかける。鶴橋ではかつてから見慣れた光景が久しぶりに戻ってきて嬉しく思う。
さらに先へ進む。
それにしても、やはり足取りが重い。ペースが落ちてきている。空腹だけが原因ではなかったようだ……。
激安自販機。30円の怪しいサイダーが売り切れ。売り切れるのか……。
坂道で容赦なく体力を削られて。
桃谷駅 13時27分 18143歩 8駅/19駅
住宅街にある普通の駅。鶴橋に近いこともあり外国人も多く住むハイブリッド的な地域。
さらに進んで。
寺田町駅 13時44分 19910歩 9駅/19駅
こちらも普通の駅だが、天王寺が近いこともあって近隣は隠れた高級住宅街。
ふう、ようやくここまで……ってまだ半分も来てないじゃないか。
もうヤダー! ヤダヤダヤダうわぁぁぁん!!
道端で転がって駄々をこねる。しかし何も起こらなかった。
嫌気がさしてきたのでまた休憩することにする。
公園のベンチに腰掛けて、道中で買ったスポーツ新聞を広げる。
そうか…またタイガースが勝ったか…。こら優勝してまうな……。
15分ほど休んだが、重い腰が上がらない。
私は知っている。歩き続けるより、休んだ後に歩き始める方がつらいことを。しかも長く休めば休むほどつらさは増す。
まぁ……もうちょっとだけ頑張ってみるか……。
ここでリタイアしてるようでは山手線の踏破など到底無理である。
遅延魔法でも食らったかのような鈍い動きで先へ進む。
むむ、あべのハルカスが見えてきたということは……
天王寺駅 14時11分 21648歩 10駅/19駅
難波駅と並ぶミナミを代表する主要ターミナル駅。日本一高いビル「あべのハルカス」と直結している。奈良と和歌山方面への玄関口。賑やかな繁華街が並ぶ一方で、近隣には寺院に動物園や美術館、路面電車も走るなど、レトロな一面も。
ここでようやく折り返し地点。
出発から約4時間が経ち、ここまで21000歩。
いや〜そうかー。なるほどねー。
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もう無理。
息が上がってきた。視界もぼやけてきた。足首も痛え。
ま、ここらで潮時かな! 今日はちょっと調子が悪かっただけだね。歳のせいじゃない、気圧が低いせいだ。大阪が広すぎるせいだ。税金が高いせいだ。今日は帰ろう。やめたやめた。
そう思って駅に向かう途中、近くの広場を通ると。
人だかりができている。どうやら大道芸人が野外パフォーマンスをしているようだ。
どうせ後は帰るだけなので、少し見ていくことにした。
50歳ぐらいの細身のおじさんが、丸い筒と箱を4段も重ねてその上に立つアクロバットを披露しようとしている。
小さな箱の上で不安定な足場を重ねて、慎重に立ち上がろうと試みる。何度か失敗を繰り返しながらも、観客から応援の拍手を受けて、ついに大技を成功させた。
大道芸人のおじさんはマイクを通してこう語った。
「この技をできる人は日本で数人だけです。私がこの技の習得に挑戦し始めたのは、45歳の時でした。始めたての頃、家の近所の公園でこの技を練習していた時は、周りの人たちは変な目で僕を見ていました。」
「でも、ずっと諦めずに挑戦し続けた結果、今日このように皆さんから大きな拍手をもらうことができました。皆さんも何か挑戦していることがあれば、ぜひ諦めず続けてください! ありがとうございました!」
うおおおおおん!!(号泣)
おじさん、ありがとう。
僕は、僕は……自分に負けてまた楽をするところだった。
僕、分かったよ。諦めずに挑戦するよ!!(影響されやすい性格)
リタイア寸前、大道芸人のおじさんの激励に心と体が奮い立つ。
再び一歩を踏み出した先は、新世界。
次回へ続く。
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